Testicular tumor
精巣腫瘍とは男性の精巣(睾丸)にできる腫瘍で、20~30歳代の若い人に多く発生します。多くは悪性(癌)で進行の速い場合が多く、昔は若い男性を冒す不治の病として恐れられていました。しかし、医学の進歩により、効果のある抗癌剤が発見されてからは転移のある進行症例でも、現在はある程度治し得る癌として考えられています。詳しい原因は分かっていませんが、停留精巣(精巣が陰嚢内に入ってなくソケイ部などに留まっている病態)があると発生率が高くなることや、症例の3分に1程度に遺伝的因子が関与していると考えられています。
Ⅰ | 転移を認めず |
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Ⅱ | 横隔膜以下のリンパ節にのみ転移を認める |
Ⅲ | 遠隔転移をみとめる |
ⅢA | 縦隔または鎖骨上リンパ節に転移を認める |
ⅢB | 肺に転移を認める |
ⅢC | 肺以外の臓器にも転移を認める |
(日本泌尿器科学会取り扱い規約1997年第2版)
→ 転移した部分の手術は通常、化学療法の後に行います。
肺や腹部リンパ節(後腹膜リンパ節)などの転移巣に対してまず行うのは抗癌剤を用いた化学療法です。1コース3週間で3~4コース行うことが一般的です。合併症(吐き気、脱毛、白血球減少など)や後遺症(精子を作る機能の低下、手足のしびれ)の問題があります。次いで、場合によりその場所を手術的に切除することもあります。
病期がIIIBやIIICなど進行している症例に対して、末梢血幹細胞輸血併用の超大量化学療法(患者様自身の静脈血の中の幹細胞を前もって採っておき、化学療法の後に輸血して戻してあげることによって大量の抗癌剤の副作用を少しでも減少させようというものです)という治療法が近年行われるようになっていて、当院でもこの治療を行うことができます。
ステージI(転移の無いもの)のセミノーマ(精上皮腫)に対して、転移再発を予防する目的で関連するリンパ節に放射線療法を行うことがあります。
ステージII(腹部リンパ節転移あり)のセミノーマ(精上皮腫)に対して、転移巣を治療する目的で放射線を関連するリンパ節にあてることがあります。
治療中の合併症:当てている部分の皮膚の発赤や体のだるさなど。
晩期の合併症:(数ヶ月~何年も時間が経ってから起こる後遺症)放射線による神経障害、腸管の炎症、狭窄などの問題があります。
精巣腫瘍は病理学的にセミノーマと非セミノーマという2つに大きく分類できます。セミノーマとそれ以外では治療成績が異なります。(非セミノーマの方が治りにくいです)
一般的なステージI、II、IIIの成績は
セミノーマで5年生存率95%以上
非セミノーマで5年生存率90%以上
セミノーマで5年生存率80~90%以上
非セミノーマで5年生存率70~80%以上
セミノーマで5年生存率30~40%]
非セミノーマで5年生存率10~20%
というように、ステージIIIになりますと極端に完治が難しくなります。