Dialysis
透析療法とは、腎不全によって体内に蓄積した老廃物(尿毒素)や水分を除去する方法の総称です。これには大きく分けて血液透析と腹膜透析とがあります。
週に2~3回、透析センターに通院しながら、1回約4時間の血液浄化法(血液をいったん体外に導出し、透析装置によって水分と老廃物を除去した後、再び血液を体内に戻します)を行います。
腹腔内(お腹の中)にチューブを留置し、そこから透析液を注入することにより腹膜といわれるお腹の中の膜を介して水分と老廃物を除去する方法です。透析液を1日4回交換する方法(CAPD)と夜間のみ交換する方法(APD)があります。
透析療法では、完全に尿毒素といわれる老廃物を除去することができません。そのため常に体内に尿毒素が存在することとなり、長期間の透析の継続によりこの尿毒素が様々な合併症をおこすこととなります。
透析療法を受けている患者さんは、一般の方より動脈硬化が進行しやすいことがわかっています。実際に透析患者さんの死亡原因の半分以上は、動脈硬化に起因する心臓病や脳卒中が占めています。その原因として考えられているのが、高血圧や高脂血症です。また、血液透析自体が動脈硬化を促進させるように働いているとも考えられています。
透析が長期間に及ぶと骨が弱くなります。これは腎臓が骨の材料であるカルシウムやリンの体内のバランスを調節する大切な臓器であるからです。透析療法のみではカルシウムやリンのバランスが狂いやすく、そのため骨が薄くなり骨折しやすくなったり、変形したりします。
全身の様々な組織にアミロイドといわれる物質が沈着することによりおこる病気です。アミロイドの材料であるβミクログロブリンは本来腎臓から排泄されるべきものですが、腎不全になるとこれができなくなり体内に蓄積することになります。そのためアミロイドが全身に沈着することとなり、特に関節や靱帯に沈着した場合は、運動障害(関節が曲がりにくくなる)や痛みが出たりします。アミロイド症の骨や関節の痛みにはなかなかよい治療法がなく日常生活が困難になる場合さえあります。
体の中の老廃物が蓄積した状態では、免疫細胞が正常に働かず(つまり免疫力が低下した状態になる)、感染症に対し弱くなります。風邪などにかかりやすくまた治りにくくなり、しっかり治療しないと重症化してしまいます。
透析療法では透析のたびに体内に水分が蓄積し透析で除去することを繰り返しています。そのため多い人で3~5kgも体重が変化してしまいます。この水分量の変化が長期間続くと心臓に大変な負担になり、ときには心不全になる場合もあります。また、体内に蓄積している尿毒素自体も心臓の筋肉に悪影響を及ぼすので、動脈硬化との相乗効果で心臓の機能が悪化してしまいます。
透析患者さんは悪性腫瘍の発生の危険性が一般の方より高いことがわかっています。その原因として尿毒素により免疫が低下していることや、尿毒症物質の中の一部のものに発癌作用があることなどが考えられています。
血液透析を行うためには血液が出入りするための血管を確保しなければいけません。はじめは腕の手首付近に内シャントといわれる動脈と静脈を吻合した手術を行い、このシャントからの血管に針を刺し透析を行います。ところが長期透析をしているうちにこの血管が細くなったりつまったりして透析に使えなくことがあります。血管には限りがありますから、何度かつまったりしているうちに使える血管がなくなってしまう場合があります。これをシャント障害、シャントトラブルなどと呼び、透析継続の障害になる場合があります。
原因があまりはっきりしていないのですが、腹膜透析を継続していると腹膜が厚く硬くなり、ひどい場合は腸も含めておなかの中で腹膜が一塊に硬くなる場合がときにあります。これを硬化性腹膜炎といい、腹膜透析が継続できないだけでなく、食事の通過が不良になり腸閉塞を引き起こす場合があります。
上記の様々な合併症を乗り越えて、20年以上の長期透析を受けている患者さんが日本では少なくありません。これは日本の医療制度のもとで透析技術が飛躍的に発達しているおかげです。さらにわが国では、献腎移植が非常に少ないため移植を受ける機会がないことも、透析医療にたよらざるを得ない理由となっています。