閉塞性脳血管障害
担当医
川俣 貴一(教授?基幹分野長)
閉塞性脳血管障害とは
閉塞性脳血管障害とは、内頚動脈や中大脳動脈が動脈硬化により閉塞(時に高度狭窄)している状態を指します。閉塞による脳血流低下や、閉塞時の塞栓物質により、脳梗塞を引き起こすことが知られています。閉塞性脳血管障害には、症候性と無症候性があります。閉塞性脳血管障害が原因で既に脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)を生じた場合を症候性、生じていない場合を無症候性と呼んでいます。
閉塞性脳血管障害のエビデンス
症候性閉塞性脳血管障害では、アセタゾラミド(ダイアモックス)脳血管反応性が低下している例で、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)再発の危険性があるとされています。日本国内の共同研究では、一定の適応基準を満たした症候性内頚動脈閉塞および症候性中大脳動脈閉塞(高度狭窄)には、開頭手術(バイパス術)が推奨されています。適応基準は、①症候性で73歳以下、②脳血流検査で中大脳動脈領域の脳血流量が正常人の80%未満かつ、アセタゾラミド(ダイアモックス)脳血管反応性が10%未満とされています。アセタゾラミド(ダイアモックス)については、適正使用指針が作成されています(http://www.jsts.gr.jp/img/acetazolamide.pdf)。
閉塞性脳血管障害の検査
閉塞性脳血管障害の検査として、①頚動脈エコー、②MRI?MRアンギオグラフィー、③三次元CTアンギオグラフィー、④脳血管撮影等を適宜使用し、脳血流検査として⑤SPECTやゼノンCTを行います。当院では、極力侵襲的な検査を控えており、術前の診断としてはMRIと三次元CTアンギオグラフィーを利用しています。脳血流の評価としては、主にゼノンCTを行います。また、原則として、治療を受ける方には心臓の精密検査も出来る限り受けて頂き、安全に治療を完遂することを目指しています。
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MRA
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三次元CTアンギオグラフィー
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MRAでは右側中大脳動脈は確認できません。
三次元CTアンギオグラフィーではバイパスに利用できる浅側頭動脈が確認できます。
ゼノンCT
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右大脳半球の血流低下が確認できます
閉塞性脳血管障害の治療
閉塞性脳血管障害に対する治療は、第一に動脈硬化リスクファクターのコントロールを目的とした内科的治療が選択されます。内科的治療にもかかわらず症候性となる場合や、脳血流検査で適応とされた場合は手術を行います。開頭手術は、頭皮の血管である浅側頭動脈を脳表の中大脳動脈に吻合する浅側頭動脈~中大脳動脈吻合術が主に行われます。また、近年で血管内治療の進歩により、バルーンと呼ばれる風船による血管拡張術が行う場合もあります。また、適応疾患にはウイングスパンと呼ばれるステントを使用することもあります。
術中所見
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A:脳表にバイパス血管を吻合した後の所見です
B:バイパスは髪の毛のように細い糸を使用して行います
C:バイパス血管吻合前、脳表の血流がやや弱い状態です
D:バイパス血管吻合後、脳表に多くの血流が流れています
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術後は、術前に確認できなかった中大脳動脈が確認できます。
当院の方針
閉塞性血管障害に対しては、脳梗塞を予防する目的でバイパス術(主に浅側頭動脈~中大脳動脈吻合術)を行っています。当院では年間約20例前後の手術を行っています。手術ではSEP(体性感覚誘発電位)、MEP(運動誘発電位)と呼ばれるモニタリングや術中の蛍光造影を併用し、より安全な治療を心がけています。またもやもや病と同様に、術後の過灌流症候群(出血や痙攣発作)が危惧されますが、術後早期(主に当日)に脳血流の再評価を行うことにより、過灌流症候群の予防に努めています。
シリコンステントを用いた微小血管直接吻合術
ゼノンCT
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術直後
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術翌日
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術直後には著明な過灌流を認めていますが、適切な治療により翌日には改善しています。
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