手術室内にMRI装置を導入し手術中にMRIを撮像することにより、臓器の位置や形状をリアルタイムに確認できます。また、手術ナビゲーションシステムを併用することにより高精度な外科手術が可能です。2000年3月より稼働し1235人の患者さんに手術を行ってきましたが、この度2013年9月に新型のMRI装置を導入しました。旧型と比較しきれいな画像を迅速に撮影できるため、進化したインテリジェント手術室ではより精密な手術を施行できることが期待されています。
- 1.はじめに
- 脳腫瘍の摘出手術においては、全摘出が最もよい結果の基本です。無理な摘出により、正常な脳神経を損傷すると手術後に合併症が生じる可能性があります。従来の脳腫瘍摘出術は外科医の経験と技術によって行われてきましたが、より精度の高い手術を実現するために客観的に再現性のある情報に基づいた手術「情報誘導下手術」を提案してきています。それを実現する場が「インテリジェント手術室」です。
- 2.術中MRI
- 現在でも多くの脳腫瘍手術は、手術数日前に撮像したMRI画像に基づいて手術計画が立案され、摘出術が施行されています。しかし脳は、開頭や手術操作によって容易に位置や形状が変化するため、手術前に撮ったMRI画像とはズレが生じます。腫瘍組織と正常組織の境目を狙って切除を行う場合、ズレのある情報を頼りに手術をしなければなりません。インテリジェント手術室では室内に設置されたMRI装置(APERTO Lucent、静磁場強度0.4T、株式会社日立メディコ)で手術中にリアルタイムに撮像することにより、最新情報に基づいた手術計画と実施が可能になります。脳神経外科だけではなく消化器外科などにおいても腫瘍の取り残しを防ぐ目的で応用が始まっています。
- 3.手術ナビゲーションシステム
- 手術中に最新のMRI画像が取得できたとしても、執刀医が切除している位置が不明確では、術中MRIの有効性も半減します。そこで手術ナビゲーションシステム(Curve、ブレインラボ株式会社)を導入しています。本法は赤外線カメラで手術器具の位置を検出し、撮像したMRI画像上に表示します。約1mmの精度で位置の確認が可能であり、より高精度な手術が可能となります。さらに手術の展開に応じて、MRI撮像の再検を施行することによりデータの更新が可能です。これはカーナビゲーションに例えれば、渋滞情報を随時更新するのと同じ意義があり、手術の進展に伴って術者に最新の情報を提示し、より確実な手術を可能とします。