脊椎変性疾患
脊椎変性疾患
頚椎病変
頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎症性筋萎縮症などがあります。神経根症(腕から指への放散痛)のみの場合、保存的加療で改善することが少なくありません。しかし、脊髄症状(歩きにくい、指が使いにくい、尿が出にくい、など)が進行あるいは持続する場合には、手術治療が推奨されます。手術治療には前方手術と後方手術があり、神経症状と脊柱管径や病変範囲、頚椎の配列などの画像所見から適切な手術方法を選択して行います。
1.頚椎前方除圧固定術
両上肢の痛み?しびれに加え、平地でも躓くことが多くまた箸が使いにくいことにも気づき来院された49歳女性です。MRIでC5/6レベルで変性椎間板による脊髄圧迫と脊髄内高信号(Fig.1)を認め、同部位の頚椎前方除圧固定術(Fig.2)を行いました。術後に症状は改善、MRIでも脊髄圧迫は改善(Fig.3)し、復職しました。なお、術後1年のCTで挿入したCage後方で骨癒合(Fig.4)を確認しています。
-
Fig.1
-
Fig.2
-
Fig.3
-
Fig.4
2.拡大椎弓形成術(後方手術)
四肢のしびれ、左上肢筋力低下、歩きにくさ、排尿しにくさを自覚し、頚椎後縦靭帯骨化症による脊髄圧迫(Fig1)を認めた55歳男性です。C3-C6の4か所で正中縦割法による脊柱管の拡大(Fig.2)を行いました。術後、症状は改善し復職し、脊柱管の十分な拡大(Fig.3)と脊髄の圧迫消失(Fig.4)を確認しました。
-
Fig.1
-
Fig.2
-
Fig.3
-
Fig.4
胸椎病変
胸椎椎間板ヘルニア、胸椎後縦靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症などがあります。病態に応じて、インストゥルメンテーションによる固定術を併用したり、前方から手術を行う場合もあります。
1.胸椎黄色靭帯骨化症
1か月の経過で歩行不能(下肢対麻痺)、排尿排便障害(残尿感、肛門が閉まらない)となった64歳男性です。T8/9レベルで骨化した黄色靭帯と変性椎間板による脊髄の高度圧迫(Fig.1)を認めたため、後方除圧術を実施しました。術後、リハビリを行い独歩可能となり膀胱直腸障害も改善しました。術後に脊髄の圧迫消失(Fig.2)を確認しました。
-
Fig.1
-
Fig.2
腰椎病変
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症、腰椎分離症(すべり症)などがあります。下肢痛(座位や立位?歩行などの姿勢で誘発される坐骨神経痛など)や下肢のしびれ、腰痛(動作時)などを呈しますが、保存的治療で改善する場合が少なくありません。保存的治療でも改善しない激しい下肢痛や進行性の筋力低下、排尿障害を認める場合は手術治療を行います。
1.椎間板ヘルニア摘出術
約3cmの皮膚切開を行い、顕微鏡下で摘出を行います。神経根を内側によけながら脱出椎間板を摘出します(Fig.1)。3か月持続する左下肢痛を呈した49歳男性です。MRIで左L4/5レベルに後方へ突出した椎間板ヘルニアと神経根の圧排を認めました(Fig.2)。痛みにより就業困難の状態であったため、手術治療を行いました。術後から下肢痛は消失し、術後7日目のMRIで椎間板ヘルニアの消失と硬膜管(神経根の束)の盛り上がりを確認しました(Fig.3)。なお、再発することもあり、3-6%前後に再手術が行われたと報告されています。
-
Fig.1
-
Fig.2
-
Fig.3
2.(部分)椎弓切除術
特徴的な症状として間欠性跛行(歩くと足が痛くなり、座って休むと痛みが焼失する)を呈します。保存的治療で改善する場合も少なくありません。神経根の除圧は顕微鏡下で行い、筋肉への侵襲を小さくするための棘突起縦割法や片側侵入法などを必要に応じて併用しています。歩行時の両下肢痛が進行性に悪化した78歳女性です。MRIでL4/5レベルに脊柱管狭窄、馬尾神経の圧迫を認めました(Fig.1)。ブロック注射など保存的治療も効果が乏しく、痛みのため50mほどしか連続歩行できない状態であったため、手術治療(部分椎弓切除+黄色靭帯摘出)を行いました。術後から下肢痛は軽減し、リハビリも積極的に行い、長距離の歩行(旅行)もできるようになりました。術後のMRIで脊柱管の拡大の馬尾神経の圧迫解除を確認しました(Fig.2)。
-
Fig.1
-
Fig.2
3.腰椎後方椎体間固定術
椎体間の不安定性が強い症例で行います。椎間板を後方から廓清し、そこに自家骨を移植します。さらに、内固定として椎弓根スクリューを挿入します。術後早期からコルセットを装着し歩行することは可能ですが、一般に骨癒合が得られるまで6か月以上かかります。L5/S1腰椎分離すべり症による右下肢痛?腰痛が半年以上持続した73歳女性です。日常生活動作も不可能な痛みが持続したため、L5椎弓切除とL5/S1腰椎後方椎体間固定術を行いました。術後から下肢痛および腰痛は消失し、1年後のレントゲン写真で、移植骨の骨癒合を確認しています(Fig.1)。また、手術侵襲軽減を目的に、椎弓根スクリュー挿入などを経皮的に行う(Fig.2)場合もあります。
-
Fig.1
-
Fig.2
4.腰椎側方椎体間固定術
腰椎の側方から椎体間に大きな人工骨(ケージ)を挿入して固定する術式です(Fig.1)。スクリュー固定も行うため、創は脇腹と背中の2か所となりますが、後方椎体間固定術とは異なり骨や筋肉を温存したまま神経圧迫を改善することが可能な点が特長です。間欠性跛行を主訴に来院された軽度の変性側弯をともなう腰部脊柱管狭窄症の76歳男性です。L2からL5までの側方椎体間固定術を行いました。骨削除は行っていませんが神経の圧迫が解除され、側彎も矯正されていることが分かります(Fig.2)。術後は姿勢が良くなり、長距離の歩行も可能となりました。
-
Fig.1
-
Fig.2