高血圧

高血圧症は、我が国では患者数が約4,300万人に上るといわれ、いわば国民病ともいえる病気です。検診や診察室においては140/90 mmHg、家庭血圧では135/85 mmHgを超えた場合に高血圧と判断されます。この基準を上回ると、将来、脳卒中、心筋梗塞、血液透析に至る慢性腎臓病などの血管疾患にかかりやすくなることが明らかとなっており、高血圧を呈するすべての方々に減塩や運動などによる生活習慣の改善が求められます。多くの場合、血圧を下げる目標も140/90 mmHgまたは135/85 mmHgであり、自助努力によってもこの血圧値を下回らない場合に薬物による治療が必要となります。

さて、一口に高血圧といっても、実はいくつかに分類されています。簡単にご説明いたします。

本態性高血圧症

単一の原因によらない、いわゆる普通の高血圧症です。高血圧全体の約90%が本態性高血圧です。遺伝的素因、加齢、塩分の取りすぎ、運動不足など、様々な要因が関与します。現在、高血圧の薬は6種類程度に分けられますが、その患者さんがどのような要因で高血圧となっているのか、その重みづけを加味して適切な降圧薬を選択する必要があります。当科では、経験豊富な医師により、最良の降圧薬が適量処方されています。夏場の血圧低下時には降圧薬を減量するなど、過不足なく機動的な薬物治療を行うようにしています。

二次性高血圧

血圧を上昇させる原因が単独であり、因果関係が明らかな高血圧を二次性高血圧と呼びます。高血圧全体の約10%弱が二次性高血圧ではないかと言われています。原因としては、腎臓や内分泌の病気が多いようです。二次性高血圧の場合、原因となっている疾患の治療により高血圧の完治または軽症化が期待されます。二次性高血圧をきたす主要な疾患は次の通りです。

原発性アルドステロン症

副腎という内分泌器官からアルドステロンと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されることによって高血圧が引き起こされる疾患です。当科では、年に延べ200名以上の検査を実施しています。左右に二つある副腎の片方からのみアルドステロンが過剰に分泌されていることが分かれば、手術により病変を取り除くことで高血圧が治癒することもあり、治療を受けたほとんどの患者様で少なくとも服薬量の大幅な減量が望めます。

腎血管性高血圧

腎臓に血液を供給する動脈の狭窄によって生じる高血圧です。腎臓が血流不足に陥ると、もっと血液を流してほしいと腎臓自身がレニンというホルモンを分泌して体に知らせます。このレニンが高血圧の原因となります。この疾患であることが分かれば、狭窄部位をカテーテルによって広げる治療を受けることにより腎臓に十分な血流を送るようにすると、レニンが低下し、血圧が降下します。

そのほか、クッシング症候群、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群、遺伝性高血圧など、様々な二次性高血圧があります。当科では、そのほとんどに豊富な経験を有しております。

女性の高血圧(妊娠に関連した高血圧)

女性に見られる高血圧のうち、代表的なものは妊娠高血圧症候群と呼ばれる病態です。その発症頻度は全妊婦の約10%弱と言われており、決して少なくありません。血圧の積極的なコントロールが必要な状態であり、これを怠ると赤ちゃんの健康状態に影響するだけでなく、お母さんのお体に障ることもあります。この妊娠高血圧症候群の危険因子として、妊娠前からすでに高血圧を有していることが挙げられます。昨今、35歳を超える比較的高年齢で妊娠出産を迎えるケースが多くなっていることから、高血圧を有しておられる女性が挙児を希望されて相談にいらっしゃることが増えています。当科では、高血圧のタイプを的確に診断し、母児のために最良の高血圧治療を提案しています。

高血圧は基本的に症状がないため放置しがちですが、確実に体を蝕むため、サイレントキラー(静かな殺人者)とのあだ名を持つ病気です。したがって、血圧が高い方には適切な診断と治療を受けていただく必要があります。また当科では、女性の血圧管理にも特段の配慮をもって臨んでおります。

患者様ご本人とご家族の健幸(健康による幸せ)をサポートするため、私たちは最適な高血圧治療をご提案いたします。血圧に関するご心配事がありましたら、どうぞお気軽にご受診ください。