その他の脳腫瘍
担当医
症状
症状は腫瘍の部位や大きさ、周囲の構造物との関係により大変多岐に渡り一概には言えません。よく想定される頭痛症状は大きな腫瘍や水頭症を合併した場合にしか発生しないことが多く、症状がないもの、予測できない症状でみつかるものが多いのも特徴です。
検査
代表的な脳腫瘍の検査は頭部MRIや頭部CTを代表とした画像検査が主なものになります。当院ではより悪性が疑われる場合にPET検査(FDG、メチオニン)を施行したり、腫瘍か神経疾患との鑑別に困難な場合に生検術を含めた対応を行います。腫瘍と血管との関係性を調べる上で造影剤を使用した脳血管撮影検査や血管造影CTなどの検査を行うことがあります。痙攣発作で発症した場合は脳波検査、視野欠損を来している場合は視野検査、聴覚障害がある場合は聴力検査、といった生理検査(機能検査)を症状や病態に応じて、行うこともあります。腫瘍の部位や症状により、上記の検査を組み合わせながら精査を行います。
分類
脳腫瘍は病理学的診断技術の向上と共に分類が発展し、130を超える種類が存在しています。代表的なものだけでも下記のように多種に渡ります。
- Central neurocytoma(中枢神経細胞腫)
- Chordoma(脊索腫)
- Dermoid cyst(類皮嚢胞)
- Epidermoid cyst(類表皮嚢胞)
- Glomus jugulare(グロムス腫瘍)
- Hemangioblastoma(血管芽腫)
- Neurofibroma(神経線維腫)
- Schwannoma(神経鞘腫<聴神経腫瘍以外>)
- Trigeminal schwannoma(三叉神経鞘腫)
- Jugular foramen schwannoma (頚静脈孔神経鞘腫)など
治療方針
脳腫瘍が発見された場合、まず精査が必要で、どこにどのような腫瘍が存在するのか、周囲構造物との関係はどうなっているのかを把握することが重要です。その上で治療方針を検討します。治療の柱は4本立てです。①経過観察、②外科治療、③放射線治療、④化学療法の4つです。腫瘍の性状や大きさ、場所、周囲の構造物との関係、患者さんの年齢や全身状態、内服状況、持っている持病の状態など様々な因子を検討し、①から④の治療を単独で行ったり、組み合わせて行います。腫瘍によっては積極的な治療を要しないこともあり、経過観察が優先されることもあります。逆に小さな腫瘍でも症状が悪くなってからでは機能温存が著しく困難である場合、早期に積極的治療を勧めることもあります。摘出よりも診断に重きをおいて、病変のうちの小さい部分だけ摘出(部分摘出)することもあれば、腫瘍の全摘出を目指す場合もあります。それは高度な医学的知識と経験に裏打ちされた判断になりますので、当院では、それぞれの担当医師が治療の目的や効果、危険性などを患者さんやそのご家族に説明し、相談を重ねて治療方針を決定しております。
当院での治療
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誘発電位
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ICG
手術はリスクを負うものですが、そのリスクを最小限にするために、当院ではさまざまな機器や手段を用いて安全性向上の取り組みを行っています。
- 神経機能温存のための神経モニタリング
- ① 運動誘発電位(Motor evoked potentials)
- ② 体性感覚誘発電位(Somatosensory evoked potentials)
- ③ 視覚誘発電位(Visual evoked potentials)
- ④ 眼球運動モニタリング
- ⑤ 下位脳神経モニタリング
- ⑥ 聴性脳幹反応( Auditory Brain-stem Response)
- ⑦ 神経刺激モニタリング(顔面神経など)
- ⑧ ICG(インドシアニングリーン)蛍光造影法を用いた動静脈血流確認
脳腫瘍の外科治療は全身麻酔で行われることが多く、麻酔がかかっている状況下でも患者さんの神経機能が温存されていることを確認するために、神経モニタリングを術中に用いています。腫瘍の大きさや部位により、障害されるリスクのある脳機能が異なりますので、上記のモニタリングの中から必要な組み合わせを選んで中枢神経である脳や、脳幹から発生する脳神経の安全、血流の温存を確認しながら手術を行っています。
当院の手術現場では高度な専門性を持った専任の神経モニタリングスタッフが常駐しているため、以上のモニタリングを行うことで脳神経外科手術の安全性を高めています。 - ハイブリッド手術室
2014年より、当院ではハイブリッド手術室が開設されました。手術室において脳血管撮影検査と血管内治療が行え、さらに同時に外科治療も行えます。同手術室を使用し、術前塞栓術を併用した腫瘍摘出術や血管構造の確認が術中に必要な難易度の高い腫瘍摘出術を行っております。
また、腫瘍が血管に浸潤していたり、術中に血流遮断が必要となるような場合では、当院ではバイパス術を併用し脳への血流を確保した上で安全な摘出術を行っています。 - ナビゲーションシステム
自動車運転で使用するナビゲーションとコンセプトは同じです。ナビゲーションは今自分がどこにいるのか、目的地まではどのように進めばいいのか、を画像で示してくれます。医療においてもナビゲーションシステムが導入されていますが、どこの病院においても存在するものではありません。予め取得した患者さんの腫瘍や周囲の構造物の情報(画像の情報)をナビゲーションシステムに組み入れることで、術中の患者さんの術野で今、どこの作業をしているのかが画像と連動してナビゲーションに示されるのです。このようにして、目的-つまり、安全に腫瘍を摘出するということが可能になります。
- 放射線治療との協力体制
手術のみで安全な摘出が困難(神経機能や脳血流の温存が困難)と考えられる場合にはガンマナイフなどの放射線治療との併用も考慮した治療方針を選ぶ場合があります。つまり、大事な血管や神経に癒着している腫瘍を意図的に残して手術を終了し、術後に放射線治療を追加することで治療を完結するという方針をとることもあります。
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ハイブリッド手術室
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ナビゲーション
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脳血管バイパス術
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