2012年9月号
協力施設?晴和病院からの報告
公益財団法人 神経研究所附属晴和病院 研修指導医 上瀬 大樹
晴和病院は昭和26年に開設された単科精神科病院です。「自分の身内でも入院させられるような病院を」をモットーに、自由で温かく開放的な雰囲気を目指し、精神疾患研究の先端?中核的な拠点となることを目標として創られました。
病棟はすべて開放病棟、病床数は約180床で、約4割が個室です。入院は常勤医8名が担当し、外来は非常勤医8名も加わって診療を行っています。かつては、統合失調症の患者さんが多数を占めていたようですが、社会事情の変遷を反映してか、近年では気分障害、不安障害の患者さんが増え、それに伴い職場復帰ということが治療上の重要性を増してきています。こうした、いわばリハビリテーションを重視する考え方は世間的にも常識と化した感がありますが、当院においても、外来患者さんを対象にうつ病リワークプログラムを実施しており、常時、十数名が参加しています。
当院には閉鎖病棟がなく、興奮の強い患者さんや重篤な自殺企図の恐れのある患者さん、隔離?拘束が必要な患者さんの入院は、原則としてお受けすることができません。したがって軽症~中等症の方が多くなり、患者さんによっては、「どこが悪いのだろう、なぜ入院しているのだろう」と不思議に思う研修医の方がいるかもしれません。また、精神科では疾患の実体が見えにくいために、何が病気なのかが分かりづらく、この点でも戸惑う先生方も多いと思います。そこで、研修医の先生には、早い段階でクルズスや教科書を通じて精神科の疾患概念の概略を把握していただき、一方で初診患者さんの予診をとる作業、本診の見学によって病歴や症状を把握する方法を実践的に学んでもらうようにしています。理論と実践の往還運動を行うことで、効率よく精神疾患への理解を深めていくことがねらいです。何名かの入院患者さんにサブ的な立場で関わってもらい、治療経過をフォローしていただきます。うつ病リワークプログラムを見学することもあります。研修の総仕上げとして、最終週に一例を選んでケースをまとめ、症例検討会で発表していただきます。
期間は1ヶ月と短いですが、精神科における疾患をみる目線を養うプロセス、病気を把握する視点などは、専門分野に進まれた後も資するところがあるものと信じております。今後ともよろしくお願い申し上げます。