当科では肺癌、および転移性肺腫瘍に対しては、ほとんど胸腔鏡下での手術を施行しております。(H27年は、肺癌症例の85%の症例を胸腔鏡下で行っております)傷が小さい分、美容上優れているだけでなく、痛みも軽く体力の消耗も少ないため、回復が早いことが、最大の利点です。肺葉切除から、部分切除、区域切除も、胸腔鏡下での手術を行っております。術後は約1週間程度で、退院可能となります。
肺に腫瘍があるものの、腫瘍が小さく、体の外からの検査(気管支鏡など)では診断がつかない場合、患者さんの負担をできるだけ少なくして病気の性質を決めるために胸腔鏡下の生検を行います。手術中に細胞診、病理診断を行い(術中迅速病理検査)、病気にあった手術をそのまま、継続して行います。
早期肺癌や、転移性肺癌、低肺機能の患者さんに対しては、肺区域切除などの縮小手術を行っています。肺の血管、気管支の走行は大変個人差が大きく、肺区域切除に際しては患者さん一人一人の解剖学的構造に合わせた術式の選択が必要になります。当科においては、術前に患者さんのCTデータから肺の立体構造を構築し、肺の解剖を忠実に再現する独自のシステム(CTTRY)を開発、運用しております。(写真1,2) このデータを用いて術前には術式のシミュレーションを、術中はモニターやタブレット端末にデータを表示させて手術ナビゲーションを行うことで、短時間でより侵襲が少ない正確な区域切除を施行しています。(写真3)
写真1 CTTRYを用いて肺の3Dモデルを構築。
写真2 肺腫瘍CT画像とそこから構築した3D肺モデル(矢印が腫瘍)
写真3 術中ナビゲーション