定位脳手術:凝固術と脳深部刺激療法
定位脳手術は、脳の中の特定の構造物をターゲットとして、そこへ電極を留置して治療を行う方法のことです。細い電極の先端を、1mm単位で正確に特定の場所に留置する必要があることから、定位(位置を定める)脳手術といいます。
このような定位脳手術には、電極を留置して熱凝固を行う凝固術と、持続的に電気刺激を行う脳深部刺激療法があります。これらの治療は、パーキンソン病、ジストニア、本態性振戦などの不随意運動疾患に対する治療として用いられます。
脳深部に細い電極を留置し、視床や淡蒼球を熱凝固または電気刺激をすることで不随意運動が改善します。
凝固術の最大の利点は、1回の手術で治療を完結できることです。脳深部刺激術のように、体内に機械を埋め込み、持続的に刺激を行い続ける場合には、機械の不具合、感染症、一定期間でのバッテリー交換手術の必要性、MRI撮影が困難など、様々な不利益を被る可能性があります。そのため、若い患者様には、より凝固術での治療が望ましい場合が多くなります。
刺激術は、組織破壊をせずに治療効果が得られるため、不可逆的な変化を起さずに治療効果を得ることができます。
いずれの治療法も、利点、欠点があり、どちらがより望ましい治療であるかを判断して選択することが重要です。
近年は、国内はおろか、世界的に見ても脳深部刺激術しか施行できない施設がほとんどです。当科では、凝固術を安全かつ適切に行いうる稀有な施設です。凝固術と刺激術を適切に使い分け、最大限の患者様の利益に資するよう、より良い治療を提案します。