重症筋無力症は、神経筋接合部のアセチルコリンレセプターに対する自己抗体が産生される自己免疫疾患です。全身の筋力低下、眼瞼下垂、複視などが出現し、時に嚥下困難、構音障害等が出現し、重症化すると呼吸不全を呈する(重症筋無力症クリーゼ)こともあります。
通常は内服薬にて経過観察しますが、治療に対する反応が悪い場合や、胸腺腫を合併する場合などは、神経内科の先生方と綿密に連携を取りながら、胸腺を手術で切除する治療(胸腺摘除術)を選択します。
通常この手術は、前胸部に縦型の傷を付け、胸骨を縦断する胸骨正中切開アプローチが用いられて来ましたが、当科では両側胸腔鏡下で胸腺摘除術を施行しています。この方法は、左右側胸部に内視鏡用の孔を開け、術中に体位を変換し、内視鏡下に胸腺および胸腺腫を切除します。本術式は傷が目立たず、また術後の痛みも軽減できることから、術後回復の促進、入院期間の短縮が見込めます。
術後も、術前同様に神経内科の先生方と連携を取りながら治療を継続します。