脳動脈瘤
担当医
川俣 貴一(教授?基幹分野長)
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が風船のように瘤状に膨らむ状態です。脳動脈瘤の多くは、未破裂の状態で発見され無症状です。
しかし、破裂すればクモ膜下出血を来しますし、中には徐々に増大して周囲の神経を圧迫することで症状を来すこともあります。
脳動脈瘤のエビデンス
脳動脈瘤の破裂率は、欧米人と日本人で異なる事が知られています。日本人は、欧米人の2.8倍破裂しやすいと言われており、年間破裂率は0.95%です(UCAS Japan)。破裂率は部位や大きさによって異なります。治療を検討するのは、①5mm以上の動脈瘤、②5mm未満で、A)症状のある例、B)破裂しやすい部位、C)不整形、などの特徴を有する場合です。
脳動脈瘤の検査
脳動脈瘤の診断としては、①MRアンギオグラフィー、②三次元CTアンギオグラフィー、③脳血管撮影(三次元ローテーションアンギオグラフィー)を使用しています。当院では、基本的な術前検査として、三次元CTアンギオグラフィーを使用しており、侵襲的な検査を極力控えています。また、頭蓋内-外移行部の動脈瘤に対しては、MRアンギオグラフィーと三次元CTアンギオグラフィーの画像をfusionさせた三次元ーCISS法と呼ばれる撮像法を利用して診断を行っています。
三次元ローテーションアンギオグラフィー
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画像を好きな方向へ回転させる事が可能で、正確な診断や治療の方針決定に役立ちます。
三次元ーCISS法
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動脈瘤が頭蓋内-外のどちらにあるのかの診断や周囲構造物との位置関係把握に役立ちます。
未破裂脳動脈瘤の開頭術
開頭手術では①動脈瘤を金属(チタン)で作られたクリップで閉塞させる「クリッピング術(時にコーティング術を併用)」、②動脈瘤をテフロンの布で覆って破裂を防ぐ「コーティング術(時にクリッピング術に併用)」、③動脈瘤に対するクリッピング術やラッピング術が困難な場合に動脈瘤部にバイパスを作って動脈瘤を血管ごと閉塞してしまう「トラッピング術」があり、当院ではその全てに対応しています。
開頭によるクリッピング術ではSEP(体性感覚誘発電位)、MEP(運動誘発電位)、VEP(視覚誘発電位)と呼ばれるモニタリングや術中蛍光造影を出来る限り併用し、より安全性の高い治療を心がけています。
クリッピング術(コーティング術併用)
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A:露出された脳動脈瘤
B:チタン製クリップでクリッピング
C:術中蛍光造影で血流の確認
D:テフロンによるコーティング
未破裂脳動脈瘤の血管内手術
血管内手術では血管内手術専門医により、動脈瘤に対するコイル塞栓術やフローダイバーター留置術を行っています。近年では脳底動脈瘤や内頚動脈傍鞍部近傍脳動脈瘤などを中心に、血管内手術を選択するケースが増えています。コイル塞栓術では、バルーンと呼ばれる風船やステント、パルスライダーを併用した治療を主に行っており、各種バルーンやステントを全て使用できる体制が整っています。治療は、ハイパースコット手術室を利用し、主に全身麻酔で治療を行っています。
巨大脳動脈瘤の治療
通常の方法では治療が困難な大型?巨大な動脈瘤に対しては、フローダイバーター留置術を検討します。フローダイバーターの留置が困難な場合は、ステントを併用したコイル塞栓術や血管吻合術を併用した開頭術を行います。血管吻合術は頭部皮膚の血管(浅側頭動脈)や下肢の静脈(大伏在静脈)を利用して行います。当院では、小児もやもや病に対しても血管吻合術を行っており、血管吻合に関して高い技術力を誇っています。
三次元CTアンギオグラフィー
フローダイバーター留置術
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A:3次元ローテーションアンギオグラフィーで脳動脈瘤を確認(矢印)
B:フローダイバーターを留置
C:治療前:大型脳動脈瘤(矢印)を認める
D:治療後:脳動脈瘤は消失している
クモ膜下出血の治療
破裂脳動脈瘤が原因であるクモ膜下出血に対しては、開頭術と血管内手術のどちらも対応が可能です。未破裂脳動脈瘤と同様に、術中はSEP(体性感覚誘発電位)、MEP(運動誘発電位)と呼ばれるモニタリングや術中蛍光造影等を出来る限り併用し、より安全性の高い治療を心がけています。脳血管攣縮に対しては、マイクロカテーテルを使用した血管内治療でも対応しています。
当院の方針
当院における脳動脈瘤症例は年間約150?200例です。そのうち未破裂脳動脈瘤や巨大脳動脈瘤が約80%を占めており、未破裂脳動脈瘤に対する治療数は全国でもトップレベルを誇っています。動脈瘤に対する治療法としては、開頭手術と血管内手術が両方選択可能で、動脈瘤の部位や形状、患者さん御本人や御家族の希望に沿って治療方針を決定しています。手術室でのカテーテル治療が可能なハイブリッド手術室であるハイパースコット手術室を備えており、より安全性の高い治療の選択が可能です。
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