腎臓疾患が原因の場合

微小変化型ネフローゼ症候群

糸球体の形態に明らかな変化はない(微小変化)のに糸球体の血管からタンパクがもれてしまいます。花粉症やぜんそくなどアレルギー反応が誘因になると考えられており、小児~若年者に多くみられます。発症は急激であり、1週間で体重が5kg増えてしまうことも稀ではありません。

治療は?

リンパ球の働きを抑える、ステロイド薬や免疫抑制薬を使用します。

治療によく反応しますが、再発が多く認められます。何度も再発する患者さんでは治療に難渋することも多く、当科では再発する方々を対象に生物学的製剤(リツキシマブ)の臨床研究を行っています。


巣状分節性糸球体硬化症

微小変化型ネフローゼ症候群とは異なり、一部(巣状)の糸球体のうちの部分的(分節性)に血管が硬くなる形態が認められます。リンパ球の働きが原因のこともありますが、メタボリック症候群などの方にも生じることがあります。
発症は急激であることが多く、微小変化型ネフローゼ症候群と同じような経過をとります。

巣状分節性糸球体硬化症
治療は?

ステロイド薬*や免疫抑制薬*を使用しますが、効果の認められない(治療抵抗性の)患者さんも多くみられることが微小変化型ネフローゼ症候群との大きな違いです。25年で約3/4の患者さんは腎不全となり透析を余儀なくされています。


膜性腎症

糸球体の血管壁に沈着物(免疫複合体)がついてしまうために、タンパクがもれてしまいます。がんや膠原病、B型肝炎、C型肝炎、くすりが原因で沈着物が作られてしまう場合もありますが、原因がなく生じる場合(特発性とよんでいます)もあります(一次性、二次性の当科の頻度の図)。中高年に多く(表)認められます。

治療は?

二次性の場合は原因となる病気の治療が優先されます。特発性の場合は、自然に軽快(自然寛解)することもあり、経過を見ながら、必要な患者さんには、沈着物を抑えるためにステロイド薬*を使用します。治療抵抗性の場合には、免疫抑制薬*を併用することもあります。予後の良い疾患と考えられていますが、タンパク尿が持続すれば、25年で約3/4は腎不全に陥ります。


膜性増殖性糸球体腎炎

血尿を伴うことが多く、糸球体の血管壁だけにとどまらず、血管と血管を保持している部分(メサンギウム領域)にも炎症が及びます。C型肝炎や膠原病などが原因のこともありますが、原因がなく生じることもあります。免疫との関係(血清補体が低い値となる)が考えられています。若年から高齢まで幅広く発症します。

治療は?

原因となる病気があれば、その治療を行います。原因が特定できない場合には、ステロイド薬*を使用しますが、治療抵抗性のことが多く、免疫抑制薬*を併用することも多くあります。比較的予後の悪い疾患です。

頻度は少ないですが、
IgA腎症 IgA腎症の項目へ
急速進行性糸球体腎炎 急速進行性糸球体腎炎の項目へ
などでも見られることがあります。