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心臓核医学

 心臓核医学検査は以前より様々なエビデンスが確立しており、負荷心筋血流シンチによる心筋梗塞や狭心症の重症度評価は冠動脈造影と肩を並べるに至っている。従って現在、心筋シンチは虚血性心疾患の診断と治療方針の決定において欠かせない検査となっている。
 当院の心臓核医学は豊富な症例を持つ女子医大心臓病センターの症例を中心に、毎年数多くの症例を経験しており、年間、負荷心筋血流シンチ約1,000例を含む計約1,700例の検査を施行している。心電図同期心筋血流SPECT は、冠動脈疾患を中心とした心疾患患者の診断、重症度評価や予後予測に必要不可欠の検査として、広く利用されている。通常、負荷時と安静時の2回撮影を行う必要があり、被験者の負担を減らすため、撮影時間の短縮化が課題であった。
 当院では2019年より半導体検出器を搭載したD-SPECTを使用しており、従来型のアンガー型ガンマカメラに比べて、より短時間で低投与量の放射性医薬品を用いた検査が可能となった。また高い空間分解能と座位撮影によるアーチファクトの低減により精度の高い検査を提供している。

D-SPECT:半導体検出器を搭載する新機種

 D-SPECT(図1)は近年開発された技術の一つであり、テルル化カドミウム/テルル化亜鉛カドミウム(CdTe/CZT)を使用した半導体検出器を搭載しており、γ線を直接デジタル信号に変換することが可能となった(従来型はγ線をシンチレーターによりシンチレーション光に変換し光電子倍増管によりデジタル変換していたため検査の感度、分解能に限界があった)。4枚の検出器配列し、その上にタングステン製ピクセルマッチドコリメーターを装着した検出部を楕円リング状に配置している。9個の検出部が回旋動作、直線移動することにより、心臓を取り囲むように投影データを得るシステムとなっている。
 新たな半導体検出器による高い感度、空間、エネルギー分解能により以前の撮像機器と比較しより鮮明でシャープな画像が得られるようになった(図3)。D-SPECTでは座位での撮影が可能となり(図2)、消化器によるアーチファクトが減少し、虚血性心疾患の感度が上昇した。また有効実効線量の低下により被曝が低減し、さらには、負荷心筋血流シンチにおいては従来と比較し1時間程度の検査時間短縮が可能となった。


  • (図1)

  • (図2)

図3 同一患者さんの従来の撮像機器(左)と新たな撮像機器(右)の画像