PET核医学
PET(Positron Emission Tomography)
当院のPET施設はPET放射性薬剤を生成するサイクロトロンを備え、2003年6月に開設した。2019年4月現在、16列、および64列CTを搭載したPET/CT(Siemens Biograph16、Biograph mCT64)の2台で検査を行っている。
使用核種は、悪性腫瘍の診断、心臓のバイアビリティ?心臓サルコイドーシスの診断として18F-FDG、脳腫瘍の診断として11C-methionine、心筋血流診断として13N-ammoniaを用いている。
当院はPET装置の無い近隣の大学病院や都内の大中規模病院などからも多くの紹介を受けており、他院とも緊密に連携して診療を行っている。
近年、PETを用いた診断および治療効果のガイドラインなどが報告されるようになり、PET検査が癌診療にとって必須の検査となりつつある。研究面ではこれまで、肺癌の診断、適正な撮像法の研究を始め、大腸癌の診断と予後、多発性骨髄腫の診断、腎癌の悪性度の診断など多岐に渡っている。
詳細は当院「核医学?PET検査室」専用サイトへ
アンモニアPET血流イメージング
13N-アンモニアによるPET血流イメージングは2013年4月より保険適用された。検査法としては心筋血流を定量的に測定する方法として20年以上前より確立し、これまで虚血性心疾患を中心にその病態や治療効果などの評価が行われ、多くの成果が報告されている。本法の利点として①定量性に優れる。②SPECTに比べ時間?空間分解能が高い。③短半減期(約10分)であり、SPECTより短時間(約50分間)で安静、負荷検査を終了することができる。一方、欠点として、①サイクロトロンにより連続し生成できず、検査可能件数は限られる。②実施に多くのスタッフによる分業が必要である。要するに手間をかければ、大変質の高い検査が可能である。
当院では2014年6月より保険診療による検査実施を行い、年間100例を超える検査数となっている。また同時に得られたデータにより多くのエビデンスを構築しており、心疾患の評価、治療において、よりよい検査データを提供することが可能となっている。虚血性心疾患患者に対し検査を行うことができるが、特に血流の定量評価が必要な患者、負荷心筋シンチでは判定が困難な症例(肥満症例や3枝病変など)等では本法が有効であると考えられる。また最近では、心臓移植後の移植心冠動脈病変評価においてエビデンスができつつあり、当院にいても心臓移植後のフォロー目的に使用されている。
(図1)アデノシン負荷法を用いたアンモニアPET検査のプロトコール
アンモニアPET検査
60歳代男性で糖尿病、高血圧、高脂血症の危険因子があり、最近労作で胸痛発作を認めるために、アデノシン負荷アンモニアPET検査を施行した。
PET画像では負荷で前下行枝領域の高度な虚血が認められた。冠動脈造影が施行され、#7 に99% 血流遅延高度 (対角枝分岐部)、#9に 99% 軽度遅延が認められた。左回旋枝、右冠動脈には狭窄を認めなかった。