脳核医学
脳核医学分野では、脳血流SPECT、脳受容体SPECT、脳糖代謝FDG-PET、脳腫瘍MET-PETなどが含まれ、SPECTは年間約600件、PETは約200件を施行している。対象となる疾患は、脳血管障害の急性期、慢性期の病態評価、CEAやバイパス手術の適応決定、てんかんの焦点検索、認知症の鑑別診断(Alzheimer病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、正常圧水頭症、その他)、神経変性疾患の鑑別診断(Parkinson症候群、脊髄小脳変性症など)、炎症性疾患(ヘルペス脳炎、小脳炎)、脱髄性疾患(多発性硬化症、ADEM)、脳腫瘍などがあげられる。
脳血管障害においては、ARG法やQSPECTを用い安静時脳血流量および脳血管拡張予備能を定量化し、治療適応や治療後評価に役立てている。
神経変性疾患、認知症疾患に対しては脳血流SPECTと脳糖代謝FDG-PETを行い、正常データーベースと比較して統計学的に有意に低下している部分を描出する統計画像(3D-SSP, eZIS, SPM) を積極的に利用している。
Parkinsonismの鑑別診断のため、ドーパミントランスポータイメージング(ダットスキャン)を発売開始当初から取り入れ、心筋MIBGシンチグラフィと組み合わせて、神経内科、脳核医学、心臓核医学の医師が協力して診断にあたっている。神経変性疾患の診断において、単に脳画像にとどまらず多臓器検索が必要となってきていることを如実に示しており、全身を俯瞰できる核医学の重要性は非常に高いと言える。
脳腫瘍の悪性度評価や再発診断に関してはTl-SPECT、FDG-PET、MET-PETなどを行っている。
以上より、後期研修において、単に画像読影にとどまらず、臨床的意義付けを含めた総合的診断のレベルまで到達できることが目標となる。
後期研修中、興味がある方には臨床研究にも入っていただく。当分野で行っている研究は、脳血流SPECT/脳代謝PETを用いた神経変性疾患(Alzheimer病、Pick病、大脳皮質基底核変性症など) の分布パターンの検討、血管性うつ病の血流像評価、心筋MIBGシンチを用いた早期Parkinson病の診断の可能性の検討、各種高次脳機能検査と機能画像との相関解析により認知機能の責任病巣を同定するというbrain mapping study、日本人正常脳のPET糖代謝標準画像の作成、Alzheimer病のmultimodal imaging study、発達障害(Williams症候群など)の核医学的検討、脳血流SPECT/脳受容体SPECTを用いた小児難治性てんかん(West症候群など)の局在診断(小児神経科との共同研究)、PET機器の物理的特性の違いによる画像の相違の検討、など多岐にわたる。いずれも共通するのは、核医学のもつ機能画像としての特徴を最大限に利用し、他のmodalityでは追求することが困難な高次脳機能の解明を目指している。画像を通して脳の神秘にふれることに興味ある方をお待ちしている。