修了式挨拶
研修医だより:初期臨床研修を終えて <修了式修了生挨拶>
平成16年4月採用
臨床研修医第1期生
天野覚美
修了生を代表してご挨拶をさせていただきます。
桜咲く季節を迎え、晴れて今日修了式を迎えることができたことを大変嬉しく思います。
私個人が初期研修医として研修する中で感じたことですが、世間で医療事故や医療体制の不備がささかやかれるこの時代に医師として働くということは、想像以上に大変なことだと実感しました。病棟で医師として患者さんと関わる中では、患者さん個々で性格も病態も異なり、困難なこともたくさんあり、逃げ出したくなることもありましたが、一生懸命手を尽くしても救えない命があり、死に直面するたびに現段階での医療の限界を感じるとともに、初心に戻り、医師になろうと思った頃の気持ちを思い出しました。
4月からは修了生それぞれがそれぞれの道を踏みだすこととなりますが、女子医大で2年間の初期研修を修了したということを誇りに思い、また至誠の心を忘れず精進していきたいと思います。
2年前の春、採血さえままならなかった私たちに一から丁寧に指導してくださった病棟の先生方、また唯一の息抜きの場として存在していた研修センターで、時には愚痴を聞いて下さった研修センターのスタッフの皆様に心から感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。またこの研修制度がこれから、より一層よいものになることを願ってご挨拶とさせていただきます。
臨床研修医第1期生
山本雅昭
私にとってこの2年間は本当にあっという間で、ちょうど2年前の4月、この部屋でオリエンテーションや初期セミナーを受けたのが昨日のことのように思われます。初期セミナーでは多くの先生、スタッフの方々の講義がありましたが、そのセミナーの中で個人的に大変印象的だったものがあります。それは接遇教育に関する講義で、「医療とはサービス業というビジネスであるが、お金という報酬をもらっても、ありがとうございましたと言わない職業は医者くらいしかない。プロとしての高い意識を持って医師としてふさわしい態度で日々患者様に接するように」という内容のものでした。確かにそれは正論でありますが、当時の私はビジネスという言葉にとても戸惑いを感じたことを記憶しています。
ウイリアム?オスラーは?医業はビジネスではなく天職である。それは常に人類同胞に対する自己犠牲、献身、愛そして優しさを医師に求めている。ひとたび医師が単なるビジネスのレベルに落ちると、感化する力は消え失せてしまい、人生の真実の光はぼやけてしまう。医師はつまらない世間の嫉妬などより遙かに高い所に自身を高揚できる人類愛に満ちた伝導的精神のもとに働かねばならない。?と述べております。1世紀昔の文章であり、当時の医療社会情勢は今とはかなり異なりますが、その本質は決して変わることはないと思います。つまり医師の報酬とは、本質的には、病める人々への献身に対する対価であって、あくまで利潤ばかりを追求するものであってはならないという戒めであります。 現在、医療訴訟や診療報酬に関するニュースが日々流れており、これからの医療に対する視線はさらに厳しいものになると予想されます。その現実を直視し謙虚に受け止めることは確かに重要なことではあります。しかし、こういう時代だからこそ我々は周囲の目に萎縮したり、媚びたりするのではなく、ビジネスという枠を超え、何よりも先ず患者さんのことを第一に考えた医療、すなわちオスラーの言う「患者と共に始め、患者と共にあり、患者と共に終わる医療」を実践することが重要であると思います。
明日でいわゆる初期研修は修了いたしますが、これから何十年と続く医師としての長い人生はまだ始まったばかりであります。ここで決意を新たにし4月からの後期研修に臨みたいと思います。
最後になりますが、二年間、ご指導下さった先生方、スタッフの皆さん、そして医師という職業の喜びや辛さ、本当に大事なことをたくさん教えて下さった多くの患者さんに心から感謝いたします。4月から皆異なった環境で、それぞれ医師としての新たなスタートをきることになりますが、これからも温かくそして厳しくお導き下さいますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。
二年間本当にありがとうございました。