コラム

親切で誠意のある医療を目指して

2010.10.01

看護師主任 佐藤 美由紀

 私たち、成人医学センターは、親切で誠意のある医療を目指しています。その取り組みの一部をご紹介します。

 当センターは、JR渋谷駅から徒歩5分のところに位置する、クロスタワービルの20階、21階にあります。ビルの中にある大学病院附属施設の診療所として、健診部門と10診療科の外来診療部門を運営しています。ビル内の診療所で入院設備はありませんが、緊急での血液検査や内視鏡など多くの検査を行うことができます。

 健診部門では、会員制健診、ビジター健診があります。詳細は、ご覧のホームページ内に紹介させていただいておりますが、会員制は、基本健診に加え、様々なコース、オプションを備えており、健診結果も生活指導という形でアドバイスさせていただく指導日を設定し、6ヶ月後の次回の健診内容も生活指導医と相談し、次回健診に備えることができます。
 また、ビジター健診コースもあり、大学病院レベルの健診内容を、広く多くの方にお受けいただけるコースも備えております。

 当センターは、健診と外来を併設しており、健診後の生活指導で精密検査が必要となったときは勿論、当日判明した異常結果に対しても、同じ施設内にある外来でそのまま診療、検査をお受けいただくことができます。

 健診を受け、その結果による外来診療を受けるときなど、顔を知っている医師、職員の中で診療をお受けいただけることも、より大きな安心と信頼をお届けすることにつながるものと思っております。

 外来受診を受けていると、そのかかりつけ科だけの診療に偏りがちです。他の臓器について、症状がなくとも、定期的に全身の検査を受け、健康管理することは大切です。このような課題に対して、当センターでは、現在ミニドック(仮称)として、例えば循環器系、消化器系など一部の健診をお受けいただける健診内容も検討中です。是非、今後ご利用下さい。

 健診や外来が私たちの重要な業務であることは間違いありませんが、さらに大切な業務として、電話受診相談への対応があります。

 病院には、様々な電話がかかってきます。とくに、患者さんや、そのご家族からの電話相談に適切に対応することは、患者中心の医療を実現するために、とても重要なことだと思います。そして、今、看護師が中心となって、対応の改善に取り組んでいます。

 私は看護師としてこの様々な電話受診相談を受ける中で、いろいろなことに気付かされました。

 具合が悪いけれど、受診のタイミングがわからず、予約がないため受診を躊躇している患者さんが実に多いということ。どの診療科へ行けばいいのか、こんなことで相談の電話をしたら病院に迷惑をかけるのでは??と遠慮をしている患者さんが多いということ。自宅は当センターから離れていて、近くの病院へ行くのに、自分の医療情報をきちんと伝えられるだろうかなど、実に様々な不安や困りを抱えていることがわかりました。私たちは、「いつでも連絡していいのですよ」というメッセージをきちんと送れていなかったのではないかと反省しました。

 私たちは、具合が悪いというお電話をいただいたら、状態が可能であれば、予約を気にすることなくご来院いただけるように準備しています。具合の悪い患者さんに適切なタイミングで診療をすることは、病院として重要な役割だと思っています。

 電話で簡単に済むご相談だと思っても、ご心配やお困りごとがあればいつでも電話をしていただきたいのです。

 かかりつけの患者さんが、遠方で具合が悪くなったとお電話をいただくこともあります。そんな時は、当センターにあるカルテ情報を、受診先の医療機関と連携しながら提供させていただき、離れていても、安心して受診できるような対応にもより努めています。

 そして、受診相談のお電話は、かかりつけの患者さんからいただくばかりではありません。このセンターへ来たこともない患者さんからの相談も毎日寄せられます。そのような相談に適切に対応することも当院が担わねばならない重要な職務だと思っています。

 例えば、「遠くに住む息子の具合が悪く、医療機関に相談しているのだが、専門診療科がないとの理由で、いくつもの病院で対応を断られてしまったんです。もうこの電話は、6件目なのです??」という相談がありました。よく症状をうかがうと、やはり当センターでも対応しかねるものでした。しかし、このまま「この病院では対応できません」などと言って、7件目に回してはいけないと思いました。そこで、連絡先をお聞きして一旦電話を切った後、以前、ほかの患者さんで連携したことのある医療機関に電話をして症状を説明し、受診許可を取り付けた上で、もう一度こちらから電話をして、その旨をお母様に伝えました。お母様は、電話の向こうで泣きながら何度も感謝の気持ちを伝えてくれました。そして後日、息子さんは無事受診し、継続的にその病院へ通院していると電話をいただきました。とてもうれしく思いました。
 電話だけでは、なかなか十分な情報が手元に揃いませんから、必ずしもいつもこのような対応が成功するとは言えませんが、このセンターで治療ができない場合でも対応できることはたくさんあると思っています。

 電話相談は、患者さんが抱えている困りそのものだと思っています。
 「目の前にいる、電話の向こうにいる患者さんに最善を尽くす」ことを大切にしたいと思っています。
 私は、看護師として対応していく中で考えました。こうやって受診相談を受けながら、看護師は診断?治療はできませんが、電話の向こうで顔色もわからない患者さんに対してでも、できることはたくさんあるのだと思うのです。

 具合が悪い、不安がある、困っている患者さんの言葉に誠実に耳を傾け、自分の中で完結できなくとも、引き受けてくれる人(病院)を探し、最後まで責任をもって繋ぐことが大切であると思っています。

 今、この受診相談の電話対応を続けていく中で、患者さんから多くの感謝の言葉をいただいています。安心したという言葉を多くいただき、センター全体での取り組みの結果はこうして患者さんからの声で評価をいただけているものと信じています。患者さんからいただく感謝の言葉は、私たちの喜びです。

 まだまだ、足りないところだらけですが、健診をお受けいただく受診者のみなさん、ご来院いただいている患者さん、電話の向こうの患者さん???私たち職員が向き合う患者さんひとりひとりに対して、親切で誠意のある医療を行っていく病院を目指します。みなさまの、ご意見?ご提案を心よりお待ちしております。