今年こそ、水虫撲滅大作戦!
2012.07.01皮膚科 非常勤講師 大江麻里子
梅雨時期に入り、ジメジメした鬱陶しい毎日ですね。それに伴い、今までおとなしくしていた足のむずむずした痒みが????また今年も水虫が元気になってきたかなって思っていませんか。水虫は治らないって諦めているあなた。?水虫が治せたら、ノーベル賞もの!?なんていうのは、もう昔の話。また、水虫は自分だけでなく、家族にもうつしてしまう病気です。ぜひ水虫に対する正しい知識を持ちましょう。
水虫とは
水虫とは、正しくは白癬菌というカビが原因で起こる皮膚病のことをいいます。足という部位に一番症状が出やすいので、狭い意味では水虫=足白癬と考えられていますが、皮膚であればどこでも感染しますので、爪や体、手、顔、頭などにも症状が出ることはありえるのです。ここではわかりやすいように、水虫(足白癬)でお話させて頂きます。
感染経路は、人から人へですので、プールや温泉、銭湯などでうつることが多いですが、最近は、スポーツクラブ、ゴルフ場に行かれる方も多いので、そこでの感染も注意が必要です。その分、家族内感染も最近は増えており、女性やお子さんでも、水虫を否定できなくなりました。但し、菌が皮膚に侵入するには約24時間はかかるため、菌がついただけでは水虫にはなりません。
ついた菌をそのままにしておいて、菌が角層に入り込んでしまうと、角層の主成分であるケラチンを栄養源にして増えていきます。角層は死んだ細胞の集まりなので、ここで増えている分には何の症状もありません。しかし、菌が増えて角層の下まで進んでいくと、やがて顆粒層などの生きた細胞と接触します。生きた細胞は、有害物質(白癬菌)を感知すると、これを排除するための免疫反応という反応がおきます。そのため、様々な化学物質を放出するようになり、その結果、炎症が起こり、?痒み??水ぶくれ?などの症状が現れるのです。
水虫と間違われる病気
「足が痒い、皮がむけている」というだけで、水虫と考えてしまう人が多いようですが、水虫と自己判断して水虫薬を外用してしまう?自称水虫?の人の中には、本当は水虫ではない人も多いのです。時には、水虫でないのに、水虫薬を塗って、かえって悪化したり、かぶれたりすることもあります。
水虫と間違われやすい病気には、皮膚カンジダ症、かぶれ、汗による水ぶくれ(汗疱)や湿疹(異汗性湿疹)などがあります。水虫と同じような皮膚の症状なので、症状を見ただけでは鑑別は困難な場合が多いですが、検査をすれば、菌の有無などで診断ははっきりしますので、自己判断は危険です。
水虫の診断
水虫は、白癬菌が原因の疾患なので、まず確定診断のために、顕微鏡での検査が不可欠です。患者さんの皮膚の落屑や水疱を取って検査します。
水虫の種類
水虫は、ジュクジュクして痒いイメージが強いですが、実はタイプが3つあります。
- 趾間型足白癬
- 足の指の間にできるタイプ。指の間がめくれたりジュクジュクしたりするものが多いが、乾燥型もあり。
- 小水疱型足白癬
- 足の裏や縁にできるタイプ。小さな水ぶくれ(水疱)が特徴。
- 角質増殖型足白癬
- 皮膚が厚くなり、乾燥してひび割れたしたりすることがある。痒みはほとんどない。
水虫の治療と普段のケア方法
まずは、抗真菌剤をしっかり塗ることです。現在は、殺菌作用でしっかり菌を退治できる薬がありますので、適切な治療をすれば必ず治ります。そのために大事なポイントが2つあります。
塗り方。たとえ、皮膚症状が一部しかなくても、必ず図1の通り、趾間、足底、踵に至るまで全面ムラなく塗ります。なぜなら、症状がないところでも白癬菌が潜んでいる可能性があるからです。どこかに少しでも残っていたら、必ず再発します。また、人は二足歩行の生き物ですので、片方の足だけが菌を踏んでいるとは限りません。左右どちらにしか症状がなくても、必ず両足に塗りましょう。塗る回数は、1日1回が主流で、お風呂上がりの、皮膚が清潔で薬の浸透に良い状態の時に塗るのがお薦めです。
塗る期間。皆さんは、痒みがなくなったり、見た目がきれいになってしまうと、治ったと勘違いして薬を塗るのを止めてしまいますが、残念ながら、白癬菌はしぶといです。先に述べたように、白癬菌は角層内だけにとどまっている場合は症状は特にありません。塗り薬をそこで止めたら、また時間と共に、ジワジワと白癬菌が増えて症状が現れます。これが再増殖で、水虫はいつまでも治りません。角層が剥がれ落ちるまでの期間が約1ヶ月。その後しっかり白癬菌を退治するために、もう1ヶ月。見た目がきれになってから、最低計2ヶ月は塗るようにしてください。
塗り薬には、軟膏、クリーム、ローション、スプレーなどいろいろなタイプがあります。基本、ご自分の使いやすいもので結構ですが、症状に応じては、返って刺激になることがあるので、注意してください。ジュクジュクしていたり、傷がある場合は、ローションタイプだとアルコールが入っており、しみるのでよくありません。また、足に触るのが嫌だからとスプレーを使う方もいますが、趾間などにきちんと塗れない可能性があるので、お薦めはできません。また市販されている塗り薬の中に、痒みをすぐ抑える作用として、メンソールや麻酔薬などが含まれていますが、この成分にかぶれる人がいるので注意が必要です。
また、同時に普段の足のケアが必要です。まずはきちんと足を乾かすこと。自宅内では、家族への感染を防ぐために、綿の靴下やスリッパを履いて、素足では歩かないようにしましょう。お風呂の中や洗い場は問題ありませんが、バスマットは使わないで下さい。ちなみに、洗濯では菌はうつりませんので、洗濯物は一緒でかまいません。足は、石鹸で趾の間まで丁寧に洗いますが、ゴシゴシ洗いすぎないでください。傷がつくと、返って白癬菌が角層に入り込みやすくなったり、塗り薬が刺激になってかぶれたりするリスクが増えてしまいます。趾の間は、常に乾いた状態がいいので、最近はやりの五本指の靴下が理想ですが、難しい場合は、ガーゼを間に挟む方法も有効です。
プールや銭湯、温泉、ゴルフ場の脱衣場では、いくら洗い場で足をきれい洗っても足を下ろさないわけにはいかないので、自宅に戻ってから、もう一度足を洗うかタオルで拭くと、菌が落ちるので有効です。白癬菌は、足から剥がれ落ちた皮膚の中でも生き続けます。じゅうたんや床は、掃除機でまめに掃除しましょう。家族の人同士で、スリッパやタオルを共用しないようにしましょう。
ご自分にとって、また大事なご家族のためにも、今年こそは水虫をしっかり撲滅して、快適な足で過ごして下さい。
(図1)
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