動脈硬化の行く末 -ATIS(アテローム血栓症)-
2012.12.01神経内科 講師 松村美由起
よく動脈硬化と言う言葉を耳にします。では動脈硬化とは何でしょう?
動脈硬化とは動脈の壁が厚くなり、弾力性が低下して血管の内腔が狭くなることを言います。その中には3種類の分類がありますが、その代表的なものがアテローム性動脈硬化です。粥腫(プラーク)と呼ばれるものが血管の壁に作られることを特徴としています。
このアテローム性動脈硬化のプラークが破綻するとそこに血小板が集まり血栓を作って、血管の内腔が狭くなり血液の流れが悪くなったり、血管が完全に詰まり、心筋梗塞や脳梗塞、足などの血管が詰まる閉塞性動脈硬化症などを起こします。これらアテローム性動脈硬化をもとに起こす血栓症を総称してアテローム血栓症(ATIS)と言います。
ATIS WEBより引用
血管は全身を巡っているので、アテローム血栓症は体の色々なところで起こります。心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞になるわけです。
ATIS WEBより引用
なぜこのような恐ろしい事が起こるのでしょうか。アテローム性動脈硬化と血栓症の二つを引き起こす危険因子が数多く関わりあって引き起こされると考えられています。すなわち、動脈硬化を起こす高血圧、脂質異常症、糖尿病などの病気や喫煙、運動不足などの生活習慣、血栓症になりやすい血液の状態など双方の危険因子が関わっていると考えられています。
REACHニュースレター第2号より引用
恐ろしいアテローム血栓症から身を守るにはどうしたらよいのでしょう。勿論動脈硬化を起こさないことが重要になりますから、上記に示した危険因子をできるだけ引き起こさないようにしてあげることが大切です。すなわち血圧やコレステロール、血糖が高いなどを指摘されたら、放置せずしっかり治療をすることです。万が一、一つでもアテローム血栓症が起こってしまったとしたら、他にもアテローム血栓症が起こっていないかを調べることが重要になります。以下に示すグラフは脳梗塞や心筋梗塞などアテローム血栓症を起こした患者さんがその後の1年間に再度アテローム血栓症を起こす割合を示しています。ここで用いられたリスクとは、脳梗塞、一過性脳虚血発作?安定性狭心症?心筋梗塞を起こしたことがあるか、心房細動、間歇性跛行、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症です。
ATIS WEBより引用
ご覧頂くように、リスクファクターの数が多くなるほどイベントすなわちアテローム血栓症による脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が高くなっています。血管は全身を巡っています。一つのイベントは他の血管にも動脈硬化や血栓症が潜んでいる可能性を十分示唆しているのです。そのため、アテローム血栓症を一つでも起こしてしまったら、その臓器のみに注目せず、全身の血管と臓器をチェックすることが大切です。たとえば、脳梗塞になった場合、脳の検査や頸動脈エコーばかりでなく、心臓エコー、足の血管閉塞を簡単に調べられるABI(足関節上腕血圧比)なども行いましょう。それがその後のイベントを予防する重要な対策になるのです。
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