子宮頸がん予防ワクチン
―ワクチンで癌の予防ができる時代の到来―
2010.03.01
准講師 東舘 紀子
――― 子宮頸がんとは ―――
子宮頸がんとは子宮の入り口にできる癌を指し、以前は単に子宮がんと呼ばれていましたが、中高年の女性が罹るものと思われています。しかし最近では、下図に示すように、若い女性における子宮頸がんの発生が増加し、20~30歳代の女性に発生する悪性腫瘍の第1位を占めています。そのため、晩婚晩産化の今日では、子宮を摘出したために妊娠できなくなったり、まだ幼い子供が母親を失ったりする場合が増加しています。
――― 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウィルス(HPV) ―――
HPVは現在100種類以上発見されており、子宮頸がんの発症原因となるのは、15種類ほどで、「ハイリスクタイプHPV」と呼ばれ、16?18?31?33?35?45?52?58???型ですが、なかでも、16型と18型が多く、海外では、約70%を占めています。日本では、約60%とやや低いのですが、20~30歳代に限ると約80%を占めています。さらに、検診では、見つかりにくく、進行の速いタイプの子宮頸がんが若い女性中心に増加しており、その原因も18型が多いといわれています。
――― HPV感染から子宮頸がん発生へ ―――
HPV感染のほとんどは性交渉によると考えられていますが、特別なことでなく、いわゆる「性病」とは異なります。HPVは身体のどこにでもいるので、性交渉を持つ人は誰でもが感染する可能性があり、性交渉のある女性なら、約80%はハイリスクタイプのHPVに1度は感染するとされているのです。
子宮頸部粘膜にHPVが付着し細胞に感染しても、ほとんどは自然に排除されます。排除されずに細胞内に長期間感染が続くと、「異形成」と呼ばれる前がん状態となりますが、それでも多くの場合は自然治癒します。残りのごく一部の人で数年から10年以上かけて異形成からがん化が起こると考えられており、この経過には、個人のもつ免疫力なども影響します。このように、HPV感染者のうち、癌を発症するのは、1%未満(200~300人にひとり)程度なのです。
――― HPVワクチン ―――
今回HPV16型?18型のワクチンが発売されました。ワクチン接種をすると、抗体が多量に産生され、HPV16型?18型ウィルスが子宮頸部の細胞に感染するのを防止します。従って未感染者である初交前の11~14歳女子に最優先で接種が必要で、この年代は免疫がつきやすい年齢でもあります。現在まで、世界中の100カ国以上でワクチン接種が開始されており、先進約30か国で、ワクチンに対する公的支援が行われています。日本でも、自治体によっては中学生に公費負担が決まったところがあります。今までワクチンを受けられなかった45歳までの女性には積極的に接種を勧めるという学会勧告が出ています。
このワクチンは、ウィルスのDNAを含んでいないので、感染する恐れもなく安全ですが、初回、1ヶ月後、6ヶ月後の3回接種が必要です。また、副作用も重篤なものはなく、注射部位の痛み、発赤、腫れなどであり、また、ワクチンの効果の持続は約20年と推計されています。
ワクチン接種を受けても、子宮頸がんすべてが予防できるわけではないので、やはり検診は必ず必要ですし、早期に発見すれば、子宮を残すことができます。ワクチンと検診で、子宮頸がんを征圧しましょう。
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